『ダブル・キャスト』高畑京一郎、1999。メディアワークス、¥100。
謎の男に襲われビルから転落した川崎涼介は、通りすがりの高校生、浦和涼
介の体の中で目覚める。父はなぜ死んだのか。謎の男は何を狙っているのか。
浦和涼介の体を借りて、その謎を解こうとする川崎涼介。一方、記憶が途切れ
るたびに、思いがけない状況で目覚める浦和涼介。死んだ川崎涼介の妹、亜希
から声をかけられたことから、別行動をとっているもうひとりの自分に気づく。
川崎涼介が自分の体で勝手なことをするために、尻拭いをさせられる優等生の
ひ弱な浦和涼介が、亜希と協力するなかで成長していく。
いつかはこんな異常な状態が終わってしまうことを登場人物に覚悟させる設
定が、ドラマとして効いている。
『夢の木の下で』諸星大二郎、1998。マガジンハウス、¥500。
「夢の木の下で」東西を絶壁で囲われた谷間に暮らし、モボクという木と共
生するツーライ人。ムーラはある日、世界の果てであるはずの壁を越えて来た
男と出会う。「遠い国から」異星に降り立った旅人の、異文化体験。諸星作品
おなじみの、スーツに帽子姿の旅人。「カオカオ様が通る」旅人、カオカオ様
に出会う。「ナムル山紀行」旅人のナムル山を巡る旅。「荒れ地にて」かつて
ツーライと呼ばれた荒れ地をさまよう旅人。「壁男」壁の中に住む奇妙な存在、
壁男。「壁男PART2」壁男に“とりつかれた”男と、その女。「壁男PART3」壁
男、社会問題化。「鰯の埋葬」会社の祭事室での朝のお勤めを命じられた古参
社員。これもおなじみ会社もの。
古参諸星ファンが安心して読める、“本来の諸星”らしい短編集。→
『クビライ〜世界帝国の完成〜』星野之宣、2003。ＮＨＫ出版、¥1600。
宗像教授、モンゴル帝国を読み解く。ＮＨＫスペシャル「文明の道」プロジ
ェクトの一企画。義経＝チンギス・カン説をからめたのは余計な感じ。同企画
で安彦良和がアレクサンドロスを描いているが、あちらは青年王を主人公とし
た歴史ドラマらしい。→
『蒼天航路・２８』王欣太、2003。講談社、¥514。
韓遂と曹操の会見。馬超、潼関から敗退。
『蒼天航路・２９』王欣太、2003。講談社、¥514。
荀文若（じゅんいく）死去。曹操、魏公就任。馬超、劉璋、劉備に下る。→
『琉伽といた夏・１』外薗昌也、2001。集英社、¥590。
ある夏の日、校庭に“落雷”が落ちてから、貴史の妹・弥衣に琉伽が住み着
いた。名作から借用した各章のサブタイトルが、内容を仄めかしつつＳＦ者の
心をくすぐる。（夏への扉。人間の手がまだ触れない。人形つかい。人間以上。
影が行く。時間旅行者は緑の海に漂う）
『琉伽といた夏・４』外薗昌也、2003。集英社、¥590。
あまりくすぐられなかったので、４巻に飛ぶ。ガールフレンド・希美にのり
うつったＴ.Ｔ.の企てを阻止した貴史は、Ｔ.Ｔ.から来たるべき未来の選択権
をゆだねられる。タイムトラベルのねたは、まあまあよかった。サブタイトル
はあいかわらずそそる。（愛はさだめ、さだめは死。雨がやんだら。闇の左手。
未来の二つの顔。ターミナル・エクスペリメント。聖なる侵入。前哨。冬の子
供たち。降伏の儀式。インベーダー・サマー。去年を待ちながら。一人の中の
二人。世界の秘密の扉。ハローサマー、グッドバイ）
『言いまつがい』糸井重里、2004。東京糸井重里事務所、¥1500。
ネットサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」に集まった読者投稿を集めた本。読者
が思わず言ってしまった言い間違いの数々。ふとんの中で寝物語？に読んだら
笑いが止まらなかった。いくつか紹介したいが、一部抜粋ではうまく伝わらな
い。無理矢理二、三。「大阪で生まれた女は堺」「バーベル体操」「夜分恐れ
いりません」
『蒼天航路・３０』王欣太、2004。講談社、¥514。
曹操、魏王に。→
『リリイ・シュシュのすべて』岩井俊二、2001。角川書店、¥850。
同名映画の原作。２０００年にインターネット上で連載された。歌手リリイ・
シュシュのファンサイト「Lily holic」への書き込みの体裁をとっている。
年末のリリイのコンサート会場であの事件が起こり、ファンサイト「Lili-
philia」が突然閉鎖されてから４ヶ月。「Lily holic」開設に「Lili-philia」
常連たちが集まってくる。ファンサイト再開への歓迎コメント、リリイへの思
い入れたっぷりの書き込み、つまらないことにキレる奴、アラシなど、掲示板
によくあるやりとりのあと、あの事件の謎解きがはじまる。そして映画冒頭へ。
映画を読み解くための有効な副読本となっている。事件のその後が本書の前
半約三分の一で語られ、後半三分の二で事件に至るまでの状況（つまり映画の
内容）が犯人の書き込みとして語られる。本書単体としても、読める本になっ
ている。常連たちによる謎解きにわくわくし（映画を見て犯人はわかってるが）、
映画に描かれなかった細部を確認できる。しかしかならずしも映画と同じ展開
ではない。なぜ岩井は彼女を死なせ、彼女を死なせなかったのか。伊藤歩とい
う女優の生命力がそうさせたのだろうか。気持ち一つで生も死もあり得たとい
う含みをもたせたかったのだろうか。→
その他。『タイムリープ』（単行本。紛失したので買い直し）『エンディミオンの覚醒・下』（文庫への買い直し）